ドーテーが自らプロヴァンスの片田舎へ移り住んだ際に聞いた話や、その地域に伝わっていた伝聞をオムニバス形式で一冊にまとめたのが、この『風車小屋だより』です。

タイトルにある通り、ドーテーが移り住んだ家は既に使われなくなり破棄されていた風車小屋。
かつては小麦を作るのに一日中働いていたこの風車小屋も、ドーテーが訪れた際には動物たちが先住民として暮らしていたために、彼はうさぎ軍を追い立ててしまうことになり、また思索家のふくろうとは部屋の上下を社エアする賃貸契約を新たに結びなおさなければならなかったほどだった。
実はドーデーは胸を患って、この地へ療養へ来ています。それだけに自然豊かなのどかな場所を選んだのでしょう。
簡素な農村での暮らしの中で、出会った人々や伝わってくる話。
それがこの物語の核です。
時にはちょっとした噂話であったり、神話のような物語であったり、そして時にはドーデーが移り住んだ風車の元の持ち主である『コルニーユ親方の秘密』といったエピソードまで紹介されています。
これは風車で小麦粉を作っていた親方が機械化の波に押されて段々と仕事を失っていく中でも、プライドを守って風車にこだわり続けていたことに賛同した周囲の人々が、やはり親方の作るのが良い!と、親方の気持ちを汲んで仕事を回したという物語です。
この地にはそんな合理的に染まりきれない人々が暮らし続けています。
コルニーユ親方のように、のどかな農村にもやがて訪れた時代の変化と向き合わざるを得なかった人もいれば、『星』で紹介されているエピソードでは、急な増水で家に帰れなくなった憧れのお嬢さんとすごした一夜を『この星の中で一番きれいな一番輝いた一つの星が道に迷って、私の肩にとまりに着て眠っているのだ』と満ち足りた気持ちになる羊飼いの話…そして、自由を求めたがゆえに命を落としてしまったやぎ…のエピソードも紹介されています。
この地に暮らす一人一人がそれぞれの物語の主人公として登場するのです。
少し街から離れ、少し文明から離れるだけで、生活はずいぶんと違って見えてきます。
また少し遠出をしたドーデーについて、アルジェリアの町での一日をすごしたり、カマルグへ狩猟へ行ったり…。
一冊の本で色々な日常に触れることが出来ます。
そしてその一つ一つが本当に些細なことで、だけど現在の日本では決して体験できないようなことばかりで、時間旅行に旅立ったような気持ちにさせてくれる、心の療養が出来る一冊です。