作家さんの中にも色々な経歴を持つ人が居ますが、弁護士推理作家の肩書きを持つのが和久峻三さん。彼は肩書きの通り弁護士の資格を持ち、法律事務所を構えたという経歴を持つ推理小説の作家さんです。
意外に推理小説の作家さんが積極的に触れたがらないのは法律の細かい部分。
もちろんそれは法律というものの難解さゆえのことですが、和久峻三さんはさすがプロだけに精通しており、法律という現実社会のルールをより詳細に持ち出すことで物語のリアリティを高める事が出来る作家さんです。
さて、そんな和久峻三さんですが、法律に関する本も多く出版しており、この作品も刑法、憲法、商法と続くおもしろ事典シリーズになります。
内容はいわゆるクイズ形式。
様々な民事的な例題を挙げ、それに対して幾つかの選択肢と、ヒントとして関連する法律の条文とが提示されるといった結構本格的に法律の勉強が出来る一冊です。
よりこだわりを感じるのは、複数回答も存在すること。
勘だけではなかなか正解に辿り着けません。
それぞれの回答に対して、違う理由(=条文や法の解釈)も述べており、一つの問題から最大限多くの知識を得られるように工夫がされており、クイズ形式の面白さの反面で参考書としての意味合いもかなり押し出されています。
他、間ごとにおもしろ裁判シリーズというエッセーが含まれ、世の中に存在する風変わりな事件の判例を紹介しています。
中には月亭可朝さんの例の事件まで…。
推理作家としての和久峻三さんのファンの方が読んで楽しめるのか?というと、答えはNO。
純粋に民法の勉強を、ちょっと遊び感覚に近づけて出来るテキスト。
ちなみに表紙は遺影と遺言書を持って不敵に微笑むブタ。
なんでまたブタを選んだのかは不明です。
広島大学教授の富井安利さんが中心となって出された一冊がこの本です。
環境法の歴史を追ってその成り立ちから考え、そして現行法体制へ対する問題点などを指摘しています。
第一部で戦前からの公害問題の勃発、それに対して制定した『公基法』、そしてそれで充分ではなかった法体制を徹底的に見直し、公基法の改正、十四の法律の集中審議〜成立という佐藤栄作内閣の歴史に名を残す『公害国会』などから入るように、この本はある程度の難易度を持つ一方で、これから環境法の勉強を始めようという人にも充分に対応する内容になっています。
ただし環境問題というものに対する基礎知識は持っていたほうが読み易い(文中で詳しく解説がなされていない環境問題の用語が登場する)かもしれません。
読み終わった感想を率直に言えば、イタチゴッコ…のような。
問題勃発〜法整備の繰り返しを続けてきた歴史がここにあります。
いつの世にも被害者ありきの前進…それは寂しいものです。
また未だに認められない環境権。憲法13条、25条に根拠を持つとされる健やかな環境を享受する権利ですが、日照権や景観権、嫌煙権といった大枠には環境権の中に含まれる個別の権利は徐々に認められるようになっている権利ですが、1993年成立の環境基本法でも環境権という形では認められないままになったもので、環境法の著書の中ではこの権利の確立を求める声は非常に大きいです。
この著作でもその提唱〜否定、そして今後の課題なども含めて解説されている他、環境権に対して否定的な判例、好意的な判例も紹介されているので参考に出来ます。
『人権としての環境権が普遍的な原理に高まるよう努めなくてはならない』…これは富井安利さんが環境権について語った項目の締めの言葉です。
高まれば良い、高まって欲しいではなく『ならない』。
この言葉には環境法を伝え、提唱していく人間の重みを感じました。
この著書の中では環境法から環境アセスメント、大気汚染、水質環境、廃棄物、リゾート開発に関連する法律と、その制定までの歴史や現状を記しているほかに、実例として伊藤護也さんは『瀬戸内海環境保全と法』ということで、瀬戸内海での実例から問題を解説しており、細かな数字を挙げながらの詳細な解説は条文を覚えるだけでは判らない問題の根本などもよく見えてきます。
今回紹介したのが第3版で1999年出版。初版は1994年でした。
巻頭で著者も触れている通り、この五年間の間における状況の変化は大きく、環境アセスメントの部分の改訂、廃棄物の部分では新たに誕生したリサイクルに関する法律の登場を踏まえたうえでの解説へと書き直されており、それに伴い最後の『地球環境の保護と法的課題』の章も手直しされています。
まだ(2007年9月現在)第4版が出ていないのは、いい事なのか、悪い事なのか…。
シリーズとしては、『やさしい民法総則』の続編となる物件法の基礎的な入門書です。
半田正夫さんが掲げる執筆の基本方針は以下の通り。
・出来る限りわかりやすく、しかも平板な説明に終わらないよう配慮すること。
ただただ説明して、無味乾燥で退屈な本にはしたくないとの考えから、まず法律の説明〜条文を読むと穴のように見える部分の事例ごとの説明を判例を交えて行います。(例:登記なしには対抗しえない第三者→不動産賃借人は一七七条の「第三者」にがいとうするか)
そしてここからもう一味。
『問題点』として、この解釈に対する問題を掲げる。これは学説の対立であり、どういった解釈で学説が対立しているのか…を説明し、その後に『問題へのアプローチ』として問題を考える為のヒントが与えられ、個々の考え方を発展させていく材料が提示されています。
・読者のニーズに応える
半田正夫さんは大学での講義はもちろん、国家試験受験団体への講義の経験もあるそうで、そこから学生達が知りたいのに、従来の参考書では余り触れられずにいた事象がある事を知り、そのフォローを出来るだけするように勤めているそうです。
この部分からなのか、半田正夫さんのこの著作の一連は『やさしい○○○』と題している割には、入門〜上級者まで対応しています。
また細かく条文や、法律によく出てきがちな外国の法律など、カタカナの単語も括弧をつけて簡易的な解説をしています。この辺りも、実はたまに引っかかる部分で、一冊の本を読むのに数刷の参考書のお世話に…という事態を回避してくれています。
・判例を中心とする。
これは先に説明したとおり、色々な法律の解釈に対して、それに対応する判例の多くはセットで出てきます。これは国家試験の勉強の為に手に取る人のための配慮で、国家試験で出てくる法律の問題は判例に依拠するものが多いためです。
法律を勉強する側としても、判例に重きを置いているのは筆者の考え方に左右されづらく、勉強の基礎を固めるのには非常に便利です。
ただし版が新しいことをチェックしないと、判例とは言えど時代の流れで変わっていく事もあります。
巻末には索引もついているので、参考書としてはかなり便利です。
また分け方も細かい。
この続編は『やさしい担保物権法』になりますが、一冊ずつが余り太さが無いというのも、勉強するのには便利な面です。
物件法という法律は、日常生活の中でもかなり役立つ場面の多い法律ですし、様々なトラブルの回避や解決の為に必要となる知識でもあります。
サッと目を通すだけでも、もしもの時の備えにはなります。
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