本の虫、中毒日記

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幽霊の部屋/ゲイリー・アラン・ルーズ(シャーロック・ホームズの新冒険)
冒頭、叙情的な表現でワトソンが悪天候を語るというシーンから始まります。
ゲイリー・アラン・ルーズさんの描くワトソンの詩的な表現は美しいものの、なんだか少し本家のワトソンとは雰囲気が違います。こういう微妙なところの再現って難しいんだなぁと言うことを、僕は贋作ホームズを通して知りました。

閑話休題。

そんな悪天候の中、ベイカー街を訪れた依頼人は話の内容から自分がくるっていうるのではないかと思われるのではないかと気にしながらある話をはじめます。

彼女はインドの暴動で重傷を負って退役する事になった夫の回復を待って、イギリスに住む大叔母の屋敷へ移り住む事になった。
しかしようやく屋敷を訪ねた時、状況は思っていたのと少し違っていた。
陰鬱な雰囲気をまとった屋敷、そしてひどく健康を害して弱りきっていた大叔母―。
変わり果て、自分の面倒を見てくれていた依頼人の従兄妹に辛く当たる様子などを見て、気分が落ち着かなかった依頼人は温かい牛乳でも飲もうと夜に部屋を出た。
しかし、その時に見てしまったのだ。

幽霊のいる部屋を―。

ネタバレ等は続き以降で。
アンブロザ屋敷強盗事件/R・C・レーマン(シャーロック・ホームズの災難 下)
あの男は自分の居場所を電報で知らせてきていたのだからね
探偵:ピックロック・ホールズ 語り手:ポトスン

シャーロック・ホームズの災難、下巻はユーモア作家篇です。
『ピックロック・ホールズの冒険』として八つの作品が出されて内の一つの作品ですが、作品自体の希少性はかなり高いようです。

さすがユーモア作家篇だけあって、たとえばホールズが薄い赤のネクタイをした船頭が横切ったのを見ると『重婚者で、また自分の大叔母を殺害している』という推理を披露します。
理由は大叔母の血は心もち赤さが薄いからだそうです。
それって血の色じゃなくて血縁関係のことでは…。

さてそんなホールズがワトソンの友人宅へ滞在する機会を得たのだが、彼はそこで『強盗が入る』という推理を披露して見せたのです。
そして、確かに強盗は出現したのだが…?

ネタバレ等は続き以降で。
最後の乾杯/スチュアート・M・カミンスキー(シャーロック・ホームズの新冒険)
その晩、ホームズはいつもの彼ではなかった』という意味深に思えるフレーズから始まるパスティーシュです。
トビー・ピータース のシリーズで知られるスチュアート・M・カミンスキーが、シャーロッキアンをニヤニヤさせるような作品に仕上げているので、要チェックです。

実はホームズは自分を演じる役者を募集するという広告を見つけ、その陰にある思惑を解き明かすために自分自身を演じるという作業に打ち込んでいたのです。
この際、全く自分自身として行ってしまうと相手にばれてしまうということを懸念したホームズは、普段の自分から少し違和感を持たせるという手法を用いています。
それはホームズを偽者だと勘違いしたワトソンの発言に現れています。

シャーロック・ホームズは決して私をジョンとは呼ばない。シャーロック・ホームズは給湿タバコ容器じゃなく、石炭入れの中に葉巻をどっさりしまっている。シャーロック・ホームズは卵が大好きだ。シャーロック・ホームズは事件にかかわっているときは、差し出されたシガレットを決して断らない

ちなみにホームズはジョン・ワトソンをジョンとは呼ばないが、ジョンの奥様はたまに旦那をジェームスと呼ぶ

文章にしてしまえばこれだけの事ですが、この人もなかなかのシャーロッキアンとみた

自分自身を演じるということに関して『至難の業だった』と語るホームズ。
『僕は僕自身に似せなければならないけれども、僕そのものであってはならないのだ』というとおり、自分自身をほんの少しだけ変えるというのはなかなかに難しいものです。
そうしてホームズはまんまと自分を演じる権利を手にした。

そんな彼に与えられた役割とは、ホームズの手により投獄され死刑を待つ身となったマルコム・ベルへ小さな薬瓶を届けることだった…。

この物語も手が込んでいて、なかなか面白いです。
むしろ贋作ホームズというベールがあるがゆえに、正当な評価を受けられないのではないかと思ってしまいました。
ホームズが手渡すはずだった無害なクラレットが入った薬瓶を使っての、死刑囚からの最後の復讐の計画…。
復讐の是非がどんな形になってでもホームズを出し抜く為に懸命に練られた作戦―。
ホームズは更にその裏をかくことで死刑囚の勝利を奪って見せたが、彼の筋書きには決して敗北は存在しなかった。

ホームズは、好敵手との別れを乾杯で見送ったのだった―。

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