正しい読み方ではなく、楽しい読み方。
弁護士の近藤彰子さんが監修された民法の変わった規定などを紹介した本です。
最近裁判員制度の導入や、テレビ番組での法律のクイズ化など、法律を身近に考える機会が増えてきており、この本のように手軽に法律の規定を楽しみながら学ぶという本も増えてきていますが、近藤彰子さんの『民法の楽しい読み方』は、他の多くの本と少し異なる特徴があります。
それは娯楽目的の民法の本のようにみえて、実は条文や規定、判例などが豊富に盛り込まれた内容であることです。
取り上げられている内容こそ『裏口入学の謝礼は、不合格なら取り戻せるか』などといった具合に民法の面白い規定、意外な規定に終始しているものの、その解説の部分となると、『民法ではこのように規定されているんですよ』では終わらず、条文や解釈、適したものがあれば実際の判例や事件を例に挙げて徹底的に解説を施します。
そう、この本は解説の部分になると急に専門書に化けるのです。
この本を読んでいて近藤彰子さんと、僕の大学時代のある教授とが重なりました。
その教授は憲法の教授でしたが、たとえ話であったり、実際の判例などについても関連する人を茶化すように説明して笑いの絶えない講義をすることで知られており、僕が通っていた大学では唯一、講義が大講義室で行われるという人気振りでした。
この教授も楽しい話で人の興味を誘っておいて、『結論が知りたい!』と思う段になると、きちんとした解説をして講義を終わらせるというスタンスを取っており、肝心の話に行き着くまでに講義が終わってしまうという悪癖があったものの、非常にわかりやすく教えてくれる教授でした。
入り口は広く、入りやすいほうがいい。
別に入り口まで厳格な雰囲気である必要はない。
特に今後、法律を生業としない私たちもそういう場に自らの意見を持っていかなければいけない時代になるのですから、こういうスタンスで作られた本の重要性は今後ますます高まっていくべきだと思います。
最後に一つ、興味深かった内容を紹介します。
『民法は、同性同士の結婚を禁じていないってご存知?』
これは意外と勘違いしている人が多い規定ですが、同性同士の結婚を不可能にしているのは民法ではなく憲法です。
なんでまた憲法がわざわざ民法の領域に踏み込んできて同性同士の結婚を禁止しているんだ…と思う方もおられるでしょうが、これはどうも憲法がそこを禁止したくて禁止という形になっているわけではなさそうです。
同性同士が結婚できない理由となる条文は『婚姻は、両性の同意にのみに基づいて成立』するというものです。
この規定、解釈の仕方は様々にあるので絶対とはいえないものの、おそらく両親などが強制的に子供たちの結婚相手を決めてしまうという古い形を否定し、自由意志で自分の結婚相手を決められるという自由について規定したものです。
その時に結婚する二人のことを『両性』と表現しているので、両性=男性、女性=男性と女性が結婚しようね♪と同意しないと婚姻は成立しないという事になってしまったのです。
単純にこの場所が『当事者同士の同意』といった具合に性別を盛り込まない表現になってさえいれば、現行民法ではその当事者同士が同性であろうが両性であろうが禁止されていないのです。
もちろん憲法>民法だから、わざわざ憲法で結婚を男女としているものに対して二重に否定する必要はないか…という理由で民法にその規定がなければ、憲法を書き換えるのと同時に民法で改めて禁止…という可能性もありますが、もうそんな時代でもないでしょう。
もしかすると今後の改憲議論の中でこうした声が上がるかも…!?
このような読み方をしてみれば法律というのは本当に面白い。
一歩踏み込んでみれば、更に興味深い。
気軽な入り口に、こんな本はいかがでしょうか…。
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