本の虫、中毒日記

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夫人失踪事件/アガサ・クリスティー(おしどり探偵/シャーロック・ホームズの災難)
僕はひとつそれぞれのやり方をやってみて、結果を比べてみようと思ってるんだ

贋作ホームズというと少し違和感の生じる作品です。
そもそもは『おしどり探偵』というタイトルで出版されたもので、トミーとタペンスの夫婦を主人公にしたシリーズの短編集に収録されています。
この本自体がパロディをテーマにしたような内容になっており、短編ごとにホームズに限らず様々な探偵小説のキャラクターの身振りや発言、推理方法を採用して事件に挑むというコンセプトになっています。

そしてもちろんこの『夫人失踪事件』はシャーロック・ホームズのやり方を踏襲することで事件に挑んだ作品です。
なので、主人公はホームズではなくトミーであり、助手も黒子役に徹するワトソンではなく夫婦として同じくらい活躍をしてみせるタペンスです。

さて、ホームズのやり方でいってみようと思ったトミー。
わざわざ化粧着、ペルシャ風のスリッパ、バイオリンというアイテムをそろえて構えています。
依頼人を迎えるや否や、『あなたはタクシーでここへ来られましたね』と、例のアレで迎え撃ちます。
ちなみにこのタクシーだと言い当てたのは『あてずっぽう』だそうです。

依頼人は冒険家で、北極からイギリスへ帰って来たばかりだった。
たまたま知人のヨットに同乗できたので予定よりも二週間も早く帰還でき、さっそく婚約者に会いに行こうと思ったのだが、その婚約者の所在がどうもはっきりしない。
親戚の家を訪ねてみても、数日後には戻ると嘯くばかりで、言われた知人の家にも行っていない様子だった。そこでトミーの元へ調査依頼が舞い込んだのだった…。

ネタバレ等は続き以降で。


事件自体はユニークな展開を続けていきます。
途中、トミーのホームズ的な推理/調査…というよりは物真似が挟まれるのはご愛嬌。
調査の結果、どうやら依頼人の婚約者はある療養所だった。

そこへ彼女がいる理由とは…。

男のドイルでは描けない、『女王』だからこそ出てきた発想の作品です。
女性心理を描くのは、そう、トミーのやり方にならってホームズ風に言えば『それは女性の領域だ』といった具合でしょうか。
依頼人が冒険へ出ている間に、少し太りすぎてしまった婚約者。
彼女はダイエットのために療養所に秘密で滞在しているのだった…。

読んでしまえばこれだけの内容です。
しかし依頼人とのさりげない会話…自分の婚約者を探して尋ねたおばの曖昧な態度を不審に感じた依頼人が太っている人間は苦手だという旨の発言をしていた…容易に通過してしまいそうな一文が、じつは事件の核心部分へ繋がるキーワードになっているというのは、さすがミステリーの女王の風格だなぁと思わされるやり方でした。

ちなみに最後に、この事件を総評したトミーのホームズ的な表現をご紹介。
まったくひとつも卓越した特色がないからね














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