本の虫、中毒日記

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殺戮にいたる病/我孫子武丸
三月三十日付朝刊一面トップ

殺人犯と、その周囲の人々の目線から連続殺人を追う小説です。
冒頭がいきなり『エピローグ』な事から、この小説は人がどのようにして殺戮に手を染めていくのか…を描いた小説のように思われるかもしれません。

異常性愛による殺人―。

いまでも世界各地でそのようなニュースが見られます。
確かにこの本はそうした事件を犯人の目線から…、そして自らの家族が犯人なのではないか?という家族の目線から追います。

安孫子武丸さんの作品としては異常なほどに陰鬱で凄惨な文章。
そして随時にちりばめられている岡本孝子さんの『夢をあきらめないで』、『はぐれそうな天使』、『見送るわ』のフレーズ…。

この本はそれ以上に触れれば全てがネタバレになってしまう。
ヒントは二つ。
冒頭の一文、そしてこの本は叙述トリックであること。

本の価値が半減しても良い人は、ネタバレ等を続き以降で。


これ、全てのトリックは最初に出払っているんですよね。
犯人は蒲生 稔というのが、本の一番最初で出てくる『エピローグ』。
そして次に仕掛けられるのが蒲生雅子が『自分の息子が犯罪者なのではないかと疑い始めたのは』というフレーズ。
そして蒲生 稔が最初に人を殺した時に抱いた『(事件を知ったら)母さんはきっと気が狂ってしまうだろう』というフレーズ。

ここまでで雅子の息子は稔という認識が与えられます。
しかし、この本の最後まで読めば判ります。
正確な続柄を挙げれば、稔の母親は容子であり、雅子は妻である。雅子の言葉で誤認してしまっているものの、もう一度読み直せば稔の母親が雅子であるという記述は一切登場しません。
要するに読者はかの有名な古畑任三郎シリーズのように、犯人を知った上でストーリーを読むという展開だと勘違いして、最後の最後で犯人が自分が思っていた人物と違うことを知ります。

そしてそのことを知った上でもう一度読み直すと、確かに稔が雅子の息子であるという事実はどこにも記述されていないし、稔の行動も、雅子の息子くらいの世代の人物であってもおかしくないし、四十代の稔であってもおかしくないように作られています。

そう。
この本のトリックは架空の登場人物ではなく、作者である安孫子武丸さんが読者である僕たち自身を騙しているのです。

叙述トリックはいくつか読んだものの、最後の数行でここまで驚かされたのは初めてです。この本は二度読む本です。














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