本の虫、中毒日記

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女王の首飾り/怪盗紳士
『盗むって、こんなに造作ないことなのか?盗もうと思いついて、手さえ延ばせば、それでいいわけなのか?』

女王の首飾り…この物語には特筆すべき点が二点あります。
一点は実在の事件をモデルに作られていることです。

時代は遡る事、ルイ15世の時代。
王は大小合わせて数百個のダイヤをちりばめた首飾りを作らせていた。
これはルイ15世の公妾として知られるデュ・バリー夫人への贈り物にする為のものだったが、王はその完成を待たずして逝去してしまう。
そこで首飾りの制作を依頼されていた宝石商は購入先を失った首飾りを、ルイ16世の王妃となるマリー・アントワネットに売ろうと試みたのだが、なかなか上手く行かなかった。
そんなとき、ド・ラ・モット伯爵夫人という人物が、マリー・アントワネットと親しいと吹聴していたので、どうにか首飾りを買い取ってもらえるように仲介を依頼したのだが、ラ・モット伯爵夫人はそれをそのまま自分の物にして支払いをせずに逃げてしまったのだった…。

この物語のタイトルにもなっている女王の首飾りというのはその首飾りであり、残された座金に買い戻せたダイヤ数個と廉価のダイヤで復元していたものです。
それでもその首飾りを持つドルー・スーピーズの一家はそれを家宝として、奥さんがそれを着けたいと望んだときのみ銀行の金庫から取り出し、使い終わればまたすぐ翌日には金庫へ戻しに行くというように大事に扱っていた。

そう、この日もそのはずだった…。
しかし翌朝、あるべき場所にそれはなかった
そして犯人探しが始まった。容疑者になったのは、その首飾りが盗まれた場所にあるとしっていた人物、そして犯行が可能な部屋に住んでいる女性…夫人の友人で幼い子供を抱えた未亡人のアンリエットだった。
しかし幾ら調べてもその犯行は立証されない。
判事はひそやかにお金に困った夫妻が売り払ってしまったのだろうと結論付けて事件をそのまま迷宮入りさせる事にしたのだった…。

一方で当事者のドルー夫人はアンリエットと犯人と決め込み、やがて彼女とその息子を家から追い出してしまった。

しかし…それから数ヶ月が経って、妙な手紙が舞いこんできた。
アンリエットから仕送りに対する感謝の手紙が舞いこんできたのだ。
よく事情を聴いてみると偽名と偽の住所を記した郵便で金銭が贈られてきたのだという。
そしてそれは彼女が死ぬまで、六年間続いた。
病気に倒れて以降は増額され、郵便の規則に反している事を指摘されれば規則に合わせて発送されたのだった…。

この不思議な二つの出来事はもうずっと謎のままになるはずだった。
しかし、ある日ドルー・スービーズ伯爵の家に招かれたある紳士がその謎の封印を解いて見せたのだ。実に鮮やかに、実に驚くべきやり方で―。
そして、それこそが特筆すべき二点目なのです。

ネタバレ等は続き以降で。


屋敷に招かれた騎士、フロニアニは話の流れから首飾りの疾走に関する事件の意見を求められた。裁判官をしていた父親と解決した事件が幾つもあるという話をしていたため、こちらの事件でも何か違った意見があるのではないかという事になったのだ。
彼は謙遜しながらも事件の詳細を聞き終えると、こう呟いた。
ちょっとうかがっただけですと、別に難しそうにも思えませんが

そして次々に事件のトリックを解いていく紳士。
事件の犯人を容疑者として屋敷を追い立てられたアンリエットの息子であるとした上で、段々と話の内容が変わっていく。
段々と犯行に及んだ少年の心理面を語りだすフロニアニ。
病気で苦しむ母を助けたいと思う子供の気持ち、そして…そう、フロニアニが知るはずのない『実は母が生活の糧にしていた召使としての位置さえ危うく失い掛ける』という状態にあったという事実こそが少年を犯行に駆り立てたのだという事実…。

そして話は少年のその後の話しにまで及びます。
『盗むって、こんなに造作ないことなのか?盗もうと思いついて、手さえ延ばせば、それでいいわけなのか?』あっさりと成功した犯行に、少年は正道に戻らなかったのだという。

そして、数日後の新聞記事にはかつて盗まれたままになっていた女王の首飾りを発見したアルセーヌ・ルパンが正当な持ち主の下へ送り届けた行為を賞賛する言葉が踊っていた。

そう、これは怪盗アルセーヌ・ルパンの最初の仕事だったのです。
当時六歳。母親の体を気遣った少年の思いは、自分の思わぬ才能を見つけるきっかけになったのでした。














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