『金はいりません。それより、いのちを返してください』
瀬戸大橋開通後、第一号の自殺者―。
そんなセンセーショナルな報道の影で、浅見光彦は讃岐の地で一人密偵を続けていた。
その指示を出したのは、他でもない母の雪江だった。
今回の事件のきっかけになるのは、いつも容疑者扱いばかりされる浅見光彦ではなく、雪江でした。
友人に誘われて市国霊場八十八ヵ所巡りに参加した事から、事件に巻き込まれていきます。
信心深くないと言いつつ、急な雨に札所を一つ飛ばそうと提案したグループから一人で離れて悪天候の中霊場巡りを決行した雪江だったが、交通事故にあってしまった。
左右の確認をせずに道へ出た若い女性の運転する車にぶつかった雪江は、怪我は大した事がなかったが、自分の名前も、どうしてこんなところに、どうして巡礼服でいるのかさえ思い出せなかった。
そう―。
雪江は記憶喪失になってしまったのだ。
ちなみに雪江が参加したのは『有終の旅』という、なんだか逝ってしまいそうな名前のツアー。
内容は八十八箇所のうち、最後の十箇所に絞って回ろうと言う企画です。
参加を散々渋っていた雪江を決断させたのは陽一郎の嫁、和子の後押しと幼い頃に抱いていたお遍路さんの衣装を着れるという事でした。
ちなみに和子が同じくお遍路さんに憧れていた事を知った雪江の反応は『急にいとおしく思えてきた』。ある意味、普段の和子の気苦労が思いやられる一文である。
雪江は女性に連れられて病院へ連れて行かれたのだが、彼女はそのまま立ち去ってしまい、迎えに来た浅見光彦と一緒に帰宅して、一週間程度で記憶は無事に戻った。
ところで母を連れて帰る旅路で浅見光彦は記憶喪失の母が自分を息子だと言われて、『きわめて満足げな気配が浮かんでいる(By光彦)』を見つけて、嬉しそうな様子でした。
ただし、記憶が戻るや否や『目を三角にして』怒られています。
記憶も戻り、いつもどおりの日常が戻ってきた―、そんな朝。
瀬戸大橋の自殺者第一号のニュースが世間をにぎわしていた。
その自殺者、久保彩奈の写真を見たとき、雪江は呟いた。
『このひと、このひとですよ……』
自分をはねた女性、その人物こそが瀬戸大橋自殺者第一号だったのである。
自分の事故が原因で自殺したのではないか…そう思い悩んだ雪江は、次男坊に自殺の理由を調べに走らせる事にしたのである。
そして話を聞いて歩いている内に、浅見光彦は幾つか引っかかる物を感じていた。遺族の家に隠れていた刑事、そして久保家にかかってきているらしい脅迫の電話―。
やがて浅見光彦は彼女の同僚に声を掛けた。
『久保さんをなんとか助けたいのです。でないと、彼女、殺されるかもしれない』
今まで以上に大きな権力に立ち向かう浅見光彦。
絡み合う利権、そして浦島太郎伝説―。
久保彩奈の『自殺』の真相の陰に埋もれた真実が少しずつ開かれていく。ちなみに、浅見光彦の月々の給与も明らかになる。
ネタバレ等は続き以降で。
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