シャーロック・ホームズの生誕百周年を記念して作られた贋作ホームズ集の上下巻から、下巻です。
非公式で古今東西の贋作を集めた『シャーロック・ホームズの災難』に対して、こちらは公認の作品という事になります。
内容もシャーロック・ホームズの災難に含まれるほどの奇抜な作品はないように感じますが、かといって王道のパスティーシュばかりではなくホームズたちを本来の姿から解き放った作品も数多く収録されており、存分に楽しめました。
ただ上巻に比べると、はじけた内容が多いような気がします。
例えば家庭も顧みずにホームズの冒険に付き合うワトソン博士の家庭事情を寸劇風に描いた『ワトスン博士夫妻の家庭生活』や、コンピューターを題材にした『奇妙なコンピューター』、そして読者さえも混沌とさせてしまいそうな、ホームズの内面を描いた『ジャックが建てた家』といった作品は、この新冒険よりもシャーロック・ホームズの災難へ登場したほうが相応しいのではないかと思えるくらい、斬新な視点から描かれた作品です。
そしてもう一つ注目の作品としてはスタンドバイミーをはじめ、数多くの映像化作品の原作者として知られるスティーヴン・キングの手によるパスティーシュ作品の『ワトスン、事件を解決す』でした。
今回の下巻の個々の作品の感想文のページは以下です。
ワトソン博士夫妻の家庭生活ー奇妙な一幕物喜劇/ローレン・D・エスルマン
二人の従僕/マイクル・ギルバート
シャーロック・ホームズとマフィン/ドロシー・B・ヒューズ
奇妙なコンピューター/ピーター・ラヴセイ
ジャックが建てた家/エドワード・ウェレン
ワトスン、事件を解決す/スティーヴン・キング
あとがき―モリアーティと犯罪社会の実態/ジョン・ガードナー