本の虫、中毒日記

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Fujisaki

Author:Fujisaki

基本はシャーロッキアン。
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鈴木敏文の「統計心理学」/勝見 明
その原動力は、既存の概念を壊して、新しいものを創ろうという意欲です。それで、すべてを乗り越えてきた。

セブンイレブンの日本における創業者であり、グループの会長である鈴木敏文さんに長くインタビューをし続けてきた著者が、その言葉の中から金言と呼べる鈴木さんの経営哲学を覗かせるようなフレーズを集め、その言葉の意味を掘り下げていく本です。
色々と鈴木敏文さんの言葉に触れ、ファンになってしまった僕にとってはベストアルバムのような一冊です。
勿論、読んでみました。

□ 心理学から読む統計
やはり言葉の節々から感じられるのは『心理学』を重視していることです。
なので『流行に乗って商売するとは“飽きられるもの”を売ることである』と言い切ります。
売れているものをランク付けするABC分析でも、『とかく、人はよく売れた商品をまたそろえようとします。それは”昨日のお客”に対する商売の仕方です』として、統計でありがちな売れているものを充実させようとする動きをけん制し、仮説とPOSシステム(商品の販売データ)による検証によって次に売れるものを見つけ出すことを重視します。
だから鈴木敏文さんは他社見学を否定します。それは、過去に売れていたものの研究にしかならないから、なのでしょう。
これは『モノ不足の時代には経済学だけで考えればよかったが』という言葉とともに、今の時代の心理学の大切さを身にしみて感じているからだそうです。
この心理学には、ソフトクリームと氷菓子のどちらが売れ出すのかといった外的要因によるものや、地域性など様々な要素が絡んでいます。
なのでセブンイレブンのフランチャイズである各店舗へ本部の考えを伝え、店舗を助けるために送られるOFCと呼ばれる方々も、ただ自分たちの持っているデータだけを重視するのではなく、店長や店員など地域に密着している人たちが持っている情報と照らし合わせながら、商品を選ぶ事を重視しているそうです。
だからこそ、POSシステムというのはただ統計から売れている商品をピックアップするためのデータではなく、自分たちがこれはいけるのではないかと思った戦略に対する答えを導いてくれるシステムでもあるのですね。
POSシステムを導入しても上手く行かない企業にとって、この差異は大きなものだと思います。

□ 心理学はより深く
今回、他の書籍よりもOFCの方など、地域の店舗経営に関する考え方などがより深く掘り下げられていました。
そこで感じたのは店舗ごとの差異に、心理学というものが想像以上に深く入り込んでいる事でした。
例えば海に近い店舗では梅おにぎりが多くラインナップされているそうで、これは釣りに行く人が、長持ちしそうな梅を選びがちなことがあるそうです。
しかしこれはまだ序の口で、例えば団地の近くにあるセブンイレブンは全て同じように動いているのかというと、団地が出来た年代によって更に分けられ、そこから学校などの施設の有無であるとか、地域の行事などにも合わせてどんどんと変えていくそうです。
最近のコンビニは表面上、どこの店舗に入っても全く同じように見えるのですが、実は立地や都市部、田舎など条件の大きく異なる店舗ごとではかなり細かいところで違っているのでしょう。

□ 情報交換の大切さ
セブンイレブンでは有名なFC会議というものがあります。
この本ではその様子も細かく紹介されています。
今まで言葉はよく目にしたものの、どういった事が行われているのかはよく知りませんでした。
それもそのはず、従来は公開されていなかったのだそうです。この本で初めてではないのかもしれませんが、貴重ですね。
各店舗に本部の情報や考えを伝えて歩いているOFCという役割の方がおられるのは先述の通りですが、その人たちは毎週火曜日に終結し、会議を行っているそうです。
そこで鈴木敏文さんのダイレクトな言葉を聞いたり、他のOFCの方々と自らが実践したことの成功例や失敗例などの情報をどんどんと交換していくそうです。
その費用もかなりかかっているそうですが、これは鈴木敏文さんのこだわりとして実際に会って話すというスタイルを貫いているそうです。
でも、その熱意って大切なんですよね。
言葉はダイレクトに聴くのと、例え高品質でもスピーカーなどを介すのでは価値が違うし、他の方の真摯な雰囲気に自分自身も飲み込まれるという体験は誰しも覚えがある事でしょう。
今のところ、こうした試みを続けているのはコンビニ業界ではセブンイレブンだけという事で、もしかしたらその強みはここから来ているのかもしれません。

□ 感想
やはり素敵な人ですね。
データを結論とはせず、データから心理学を考える人なんだなと痛感しました。
FC会議における鈴木さんを顧客代表と、著者が評しましたが、顧客の代表になれるくらいお客の心理を知り尽くさないと商売は難しいし、時流に左右されがちです。
だからコンビニというのは著者のいう言葉を用いると『アフォーダンス』(モノの使い方を提案している事なんだそうです)になっていくのでしょう。
それは、気づかない内に。
本当に全てを提供し続けてきたのは、今では斜陽産業になりつつある百貨店でした。
しかし今の時代は無印良品やユニクロのように、提案型が流行る時代です。
実はコンビニというのは満遍なく揃えているように見えて、地域性などを考慮しつつお客様に『こういうものっていいですよね?』という提案をし続けている提案型の業種なのではないでしょうか。
そしてその原動力は今まで売れていたという過去を切り捨てる勇気を持って行動をしてきた事なのではないでしょうか。
冒頭に紹介したフレーズは、セブンイレブンの創業精神として紹介されていた言葉ですが、単純なようで、実践するのは本当に難しい言葉だと思いました。




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