冒頭からホームズとワトソンの口論で始まる、珍しいパターンの作品です。
口論の内容はこれまでも幾度かチクチクと皮肉として登場した『ホームズの事件の表現』。
最初、ホームズは事件の大小に関わらず、推理の内容の面白さで事件を選ぶワトソンを評価したホームズ。ワトソンは謙遜気味に『僕の伝記は煽情的だと一部から非難されるところがあるが、それを甘受しなければいけないところもある』と答えると、そこからホームズが一気に攻勢に転じたのだった…。
興味深い仕事が途切れていた為に不機嫌だったホームズは、その日の新聞広告を読み終わって、今日も興味をそそる事件にありつけそうにないと判ると、そばにいたワトソンに噛み付いたのだった。
…八つ当たりをする名探偵の姿がここにある。
ところで彼の不機嫌を増させたのが、家庭教師の仕事を受けるかどうか悩んでいるからアドバイスをくれという電報。自分の仕事はここまで落ちたのかと嘆くホームズだったが、この電報こそがホームズシリーズでもその奇抜さで人気を集める作品の始まりを告げるものだったのだ…。
依頼人は利口そうで身なりや態度もきちんとした女性で、前職も家庭教師をしていたのだが、勤めていた家がカナダへ引越しする事になってしまい、仕事を失くして貯蓄を切り崩す日々を送っていた。
そんな折に家庭教師の仕事を斡旋する事務所で、彼女を非常に気に入った男性がいた。
一目見るや、前職の倍以上の金額で彼女を雇うというのだ。
金銭面で苦労を強いられていた彼女にとっては非常に魅力的な内容だったが、その条件には幾つか変わった事があり、たまに着る服を指定することや、決まった場所へ座ってもらうこと、そして髪を短くすること…。
最後の髪の条件が嫌で一度は断った物の、後日、条件面を更に向上させて再度依頼が舞い込んできたのだった。
そして彼女はもし何かあればホームズへ助けを求めるという後ろ盾を心強く感じて、その仕事を受けることとなったのだった。
ところで、この作品中でワトソンはホームズがこの依頼人に好感を抱いて接している事を記しているが、ラストで残念ながら彼女が事件の中心人物ではなくなった途端、彼女に興味を示さなくなってしまったと書き綴っている。
…何を期待してるんだ、ワトソン。
っていうか、朝方そういう論調で記録を残すという事について散々嫌味を言われたばっかりだという事を、あなた自身が記録したんじゃないのか。
ホームズもこの作品を読んでさぞかし力が抜けたことでしょう。
ネタバレ等は続き以降で。
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